催眠術はゼッタイにとけるの?
「催眠術ってとけないこともあるんですか?」
催眠術を体験いただくときに、
必ずといっていいほどされる質問です。
逆にいえば、催眠術師の仕事は、
この質問に誠実にこたえることからはじまるわけです。
テレビや小説などの影響もあるかもしれません。
ふと〝永遠にめざめなくなる〟なんてイメージをもたれたりするのですね。
あるとき催眠術が失敗して、二度とさめることのない眠りについてしまう。
想像するだけでこわくなりますね。
しかし、現実には、そんなことありません。
安心してください。
そもそも〝催眠状態〟とは——想像されるような——特殊な状態でないのです。
むしろ日常的に、だれもが体験していることです。
・電車のなかでぼーっとする
・授業や仕事のあいだものおもいにふける
・映画をみているとき
・睡眠にはいるまえの妄想
・瞑想、ヨガ、リラクゼーションの時間
これらも、日常的な、催眠状態になります。
なんとなく理解されたかもしれませんね。
ようするに、なんとなくぼんやり(なにかに集中して)時間の感覚がおかしくなる。
それくらいの状態のことなのです。
だれもが毎日、何度となく経験していることですね。
もはや〝永遠にめざめなくなる〟とは、ほど遠い状態です。
そして、こうした状態にいると、無意識の力をひきだしやすくなるのです。
それを言葉や動作によって、人為的にひきだそうというのが〝催眠術〟です。
ですから「催眠術ってとけないこともあるんですか?」という質問は、
まったくのデタラメになります。
とはいえ、催眠術師は、こうした質問をおろそかにしてはいけません。
むしろ何度でも説明する義務があります。
被験者が「もしなにかあったらどうしよう」と、おもうのはあたりまえのことです。
その心を理解しようとすることが、ひいては互いのプラスになるのです。
こちらは何百回目の質問だとしても。
むこうははじめての体験なのです。
催眠術師は「たまたま催眠術を知っただけ」なのですから。
そのことに謙虚でいるべきでしょう。